街の風景に色彩が与える影響~街ごとに異なる印象と住人に与える影響~

街の印象は「色」で変わるって知っていましたか?

ふと立ち寄った街で、「なんだかここ、気持ちが明るくなるな」「落ち着いていて心地がいいな」と感じたことはありませんか? その理由のひとつに、「街の色彩(しきさい)」が関係しています。

建物の外壁や屋根の色、道路標識や街灯、花壇や看板、そして夕方のライトアップまで。街の中にはたくさんの「色」が存在しています。そして、その色の組み合わせが、私たちの心にふわっと印象を与えてくれているのです。

実はこの「街の色」、そこに住む人々の気分や行動、そして街の活気や魅力にも関わっていると言われています。今回はそんな「色彩」が持つ不思議な力と、街の表情、そして住む人たちへの影響についてご紹介します。

街の個性は「色」でできている?〜世界のまちの事例から〜

まずは、色によって印象がまったく違って見える街をいくつかご紹介しますね。

■ パステルカラーの夢のような島・イタリア「ブラーノ島」

ヴェネツィアの沖にある小さな島「ブラーノ」は、まるで絵本から飛び出したようなカラフルな街並みで知られています。家ごとに異なるパステルカラーで塗られ、水路に映るその色彩はとってもロマンチック!住民たちは「この色がこの島の誇り」と話し、訪れる人にも優しい気持ちを届けてくれます。

■ 伝統色で包まれた日本の古都・京都の町家

一方で、日本の京都、特に嵯峨野(さがの)や祇園などでは、建物の外観に使われる色が落ち着いた茶色や墨色、土壁色など、いわゆる「和の色」に統一されています。看板の色やサイズにも厳しいルールがあるのです。これが、京都特有のしっとりとした美しさや、歴史の深みを感じさせてくれます。

■ 活気あふれる原色のまち・沖縄「那覇 国際通り」

那覇市の国際通りに立つと、色とりどりの看板や赤瓦屋根、ビビッドな建物の色に囲まれて、思わず元気がわいてきます。「赤」「黄色」「青」といった強い色使いが、南国らしい開放感と人のあたたかさを感じさせてくれるのですね。

このように、それぞれの街には「色の個性」があり、その印象はまさに「色しだい」と言えるのです。

色はこころにも影響する?~暮らしの中にある“色のチカラ”~

では、色は見る人の気持ちにどんな影響を与えるのでしょうか? 街の風景に取り入れられている色が、住んでいる人たちの日々の感情や行動にもやさしく働きかけていることが、最近の研究でもわかってきています。

■ 色と気分の関係

赤・オレンジ・黄色などの「暖色系」は、元気をくれたり、気分を高めたりする効果があると言われています。にぎやかな商店街やイベントスペースに多いのはそのためですね。

青・緑・水色などの「寒色系」は、落ち着きやリラックス感を与えてくれます。学校や病院、住宅地に使われることが多いです。

ベージュ・茶・グレーなどの「中間色」は、安心感や穏やかさを感じさせてくれます。伝統的な街並みや和の空間でよく見られます。

つまり、街の色合いによって、住んでいる人が「外に出てみようかな」「なんだか落ち着くな」といった自然な行動を取るようになることもあるのですね。

■ 色が人をつなぐ、まちを育てる

色彩は、人と人とのつながりにもやさしく作用します。たとえば、色が明るい街では「地域のイベントへの参加率が高い」「人が外に出やすい」などの調査結果もあります。逆に、無機質で暗い色の多い街では、人々が家にこもりがちになってしまう傾向もあるそうです。

また、街に誇りを持っている人は、「まちづくりに参加したい」「景観を守りたい」という気持ちが強くなるとも言われています。これは、色が「この街がわたしの居場所だ」と思えるきっかけをくれているからかもしれませんね。

街の色を、少し意識してみませんか?

私たちの暮らす街は、実にたくさんの色でできています。そして、その色が人の心に働きかけて、日々の気分や行動、地域の雰囲気までも少しずつ育てているとしたら……ちょっと不思議で、あたたかい話ですよね。

これから街を歩くとき、「この街の色ってどんな気持ちになるかな?」「自分だったら、どんな色の街に住みたいかな?」と考えてみるのも面白いですよ。

色は、暮らしを彩るだけでなく、人とまちをつなぐ大切なコミュニケーションなのかもしれません。あなたの街にも、きっと素敵な「色のチカラ」が隠れているはずです。