園芸療法とフラワー心理セラピー(フラワーセラピー)の違いは?
『緑豊かな庭で土に触れる喜び』『色鮮やかな花を眺める癒し』植物が人間の精神に与える影響は古くから知られてきました。時代が進んでも、お花見や紅葉狩りのような自然に触れるイベントが残っているように、私たちは無意識に自然を求めています。
現代社会のストレスが増大する中、植物を活用した心理療法の代表格が「園芸療法」と「フラワー心理セラピー」です。一見似ているように見える療法ですが、実は目的や手法に大きな違いがあります。しかし、どちらも植物を用いた療法であるため、違いがわかりづらいですね。
園芸療法とは
園芸療法とは、植物を育てることや植物を用いた創造活動によって、身体的、精神的、社会的な健康の改善を目指すものです。もともとは、心身の回復が必要な方に対して、社会参加や社会復帰のためのリハビリ目的で行われてきました。
作業を行いながら改善を目指す「作業療法」の側面が強く、少年院や高齢者介護施設、障害者施設、長期入院病棟などの施設や病院など、生活を共にする集団の中で多く取り入れられています。
園芸療法の目的
園芸療法の目的として掲げられていることは、5つあります。
作業を行うことで、その目的を達成できるように考えられています。
1. 生活の質を向上させること
2. 運動不足を解消して、筋力低下を予防すること
3. 外出機会を増やすこと
4. 社会性を改善維持する
5. 意欲向上・生きがいづくりにする
園芸療法で行われること
園芸療法で行うことを具体的にあげると、「植物の鑑賞」「フラワーアレンジメントなどの加工作業」そして「植物の成長に関わる園芸」です。
園芸作業は土に植物を植え、土に触れながら生命を育てていきます。その過程で、植物の成長を感じたり収穫を行い、長い期間をかけて行われるのが特徴です。
フラワー心理セラピーとは
フラワー心理セラピーは、園芸療法と同じように植物を扱いますが、芸術療法の1つであることが大きな特徴です。
芸術療法とは絵画や造形など様々な媒体を使って、心のうちを視覚的に表現するものです。表現活動をすることで、言葉にしづらかった思いを表に出したり、閉ざしていた心を解放するなど、心の健康につなげます。
フラワー心理セラピーの目的
フラワー心理セラピーは、心の赴くままお花を選び、あるがままの気持ちで自由にアレンジすることで心の状態を映し出します。生きた花の生命力を肌で感じることで、心身の癒しを得ることを目的として行われています。また、花によって異なる心理効果にも着目し、心理状態にあった花選びで日々のストレスを和らげたり、心身のバランスを整えることもできます。
フラワー心理セラピーで行われること
フラワー心理セラピーでは、表現活動のための手段として切り花を用いて創作活動を行います。絵画療法や箱庭療法などと同様に、表現活動を行ったその場で完結できるのが大きな特徴です。
芸術療法士であり心理カウンセラーの芙和せらが、1989年に芸術療法の1つとして始めたものが原点となっています。花を自由にアレンジメントすることで自由な表現活動を行い、心理的な解放や改善を目指します。セラピストは花の表現を基に心理分析を行い、心の健康をサポートします。
園芸療法とフラワー心理セラピーの違い
一番異なるのは、園芸療法は作業療法的な側面が強く、フラワー心理セラピーは芸術療法として自己表現をするという点です。園芸療法は作業過程を通じて心身のリハビリを行い、社会参加や社会復帰を目指します。その場ですぐに結果を得られるものではなく、長い期間を通して目的を達成していきます。
一方のフラワー心理セラピーは、今の気持ちを花に反映させて表現することで、心理状態を分析し改善や維持を目指すものです。今の気持ちをその場で表現し、その場で完結させていきます。
まとめ
人は自然や植物との関わりの中で、癒しを得てストレスも緩和されると言われます。五感を使って花や植物に接することで脳にも刺激を与え、活性化します。
園芸療法とフラワー心理セラピーは、どちらも生きた植物の効果を取り入れ、心身の健康につなげることを目的としています。アプローチの方法が異なるため、違いを理解して適したものを選んでみてください。