輸入花流通の最新事情

花屋に並んだ色とりどりの美しい花々を見ていると心が癒されますよね。実はその花々の多くが、海外から輸入されていることをご存知ですか。日本国内でも四季折々の花が多く生産されていますが、輸入花があるおかげで1年を通して様々な種類の花を楽しむことができています。

最近では、輸入花の流通は大きく変化し、新しい品種が増えたり環境に配慮した栽培方法が取り入れられるなど、より良い形で私たちの手元に届くようになっています。

このコラムでは、海外から輸入される花の最新事情についてご紹介します。繊細で命が短い花を、わざわざ遠方から輸入するのにはどんな理由があるのでしょうか?花が美しい姿で私たちの手元に届く秘密にも迫ります。

市場における輸入花の現状

日本の花市場では長年、国内産の切花が主流でした。しかし最近では輸入切花の割合も増え、今では約30%ほどを占めています。特にバラやカーネーション、蘭などは、輸入量が多い代表的な花です。そして、日本に輸入される花の主な産地には、オランダ、エクアドル・コロンビア、中国、ケニア・エチオピアなどがあります。

エクアドルやコロンビアは、一年中気温の変化が少なく温暖なため、花の栽培に適しているのです。中でも大輪のバラが人気で多く生産輸入されています。オランダといえば、チューリップのイメージをもたれる方も多いでしょう。実はオランダには世界最大の花市場があり、チューリップの他にも品質の高いバラも多く生産されています。また、中国はカーネーションや菊の栽培が盛んで、価格も安いことが大きな魅力です。

そして、最近注目されている新興産地としてケニアやエチオピアも挙げられます。両国とも高地特有の気候条件と安価な労働力を活かし、高品質かつ競争力のある価格で切花を生産しています。また、政府や民間団体による支援が輸出市場拡大を後押ししており、その理由には、花産業によって莫大な雇用が創出でき、女性の経済的自立や地域社会の発展に貢献しているのも大きな特徴です。

輸入花が流通する流れ

海外で栽培された花が日本の私たちの手元に届けられるまで、どのような流通経路をたどっているのでしょうか。

まず、現地の農園で栽培された花は、開花直前のタイミングで収穫されます。そして、輸送は鮮度を保つために、最もスピーディな航空便が用いられることがほとんどです。日本に到着すると、農林水産省で「検疫」という病害虫の問題がないかのチェックが行われます。検疫に合格すると市場へ運ばれ、国内産の花々とともに仲卸業者を経由して花屋やスーパーの店頭に並べられます。

輸入花市場の最新トレンド

最近の輸入花には、さまざまな新しい動きがあります。ここからは輸入花の最新トレンドについてご紹介します。

これまで、海外から輸入される花の多くは、バラやカーネーションなど「定番」と言われるものが中心でした。しかし、最近では海外産ならではのユニークな品種も入荷しています。気候の面から日本では生産が難しい品種であっても、自生地に近い場所であれば効率的に生産ができることが活かされているのです。生花店でよく見かけるようになった大輪バラや珍しいカラーのチューリップは、それぞれエクアドルやオランダから輸入されたもの。他にも、種類豊富な蘭など、輸入花ならではのラインナップは、わたしたちの目を楽しませてくれますね。

また、農薬の使用を控えて栽培された花や、生産者の生活を守るフェアトレード認証が行われている花が増えていることも注目ポイントです。輸送方法も、これまでメジャーだった空輸から、低温コンテナによる船便を使用するなど、環境に配慮したものを取り入れ始めています。

輸入花のこれから

ここまで見てきたように、輸入花の流通は日々進化しながらわたしたちの暮らしに彩りを与えてくれています。しかし、いくつかの課題も抱えています。まず、近年のコロナ禍やウクライナ情勢のような世界情勢の影響を受けやすく、それによる流通や価格の不安定さが起こりやすいという点です。

また、日本国内で生産された花とのバランスをどのようにとるかも大切です。安くて美しい輸入花が増加することで国内生産者が苦戦するようになると、国産花ならではの鮮度や地域特性を活かした美しい花が生き残れなくなる可能性もあります。

さらには、環境問題への配慮も必要です。近年はフェアトレード認証を受けた花や農薬の使用を減らし環境に配慮した花を選ぶというサステナビリティの考え方も広がっています。輸送についても航空便だけではなく、低温コンテナを使って船便で輸送することも多くなっています。

また、最近ではオンライン取引を行うことで、市場を通さずに海外の花農家から直接仕入れを行うこともできるようになっています。

まとめ

輸入花は日本の花市場に欠かせない存在として、豊富な種類の花々を届けてくれています。それによって、わたしたちは四季を問わず1年中美しい花を手に入れて花との暮らしを楽しむことができているのです。

一方で、輸入花の流通は世界情勢の影響を受けやすいことや、国産の花とのバランスや環境への配慮が求められるなど、さまざまな課題もあります。また、近年は装飾性よりも自然体の美しさが重視され、豪華な花よりもカジュアルなものが好まれるなど、消費者のニーズも多様化しています。輸入花と国産花の特徴をよく知ったうえで、どんな花を選ぶかを考えることが、持続可能な花市場の発展につながっていくことになるでしょう。

輸入花の流通がより良い形でわたしたちの暮らしを彩り続けてくれるように、美しい花との暮らしを楽しみながら考えていきませんか。