冬でも春の花が楽しめるっていいね〈流通のしくみ〉
冬の寒い時期に、花屋で春の花に出会うと思わず心が躍りますよね。チューリップのつぼみやスイートピーの可憐なパステルカラーの花。目にするだけで、気持ちだけは春を先取りしたようで、自然と温かな気持ちになります。
このように、季節を先取りした花を楽しめる環境は、いまではすっかり身近なものになりました。しかし、自然の中であれば春の暖かさを待って初めて咲く花々が、なぜ冬の時期に花屋の店頭に並ぶのでしょうか。その裏側には、生産現場や流通の過程で重ねられてきたさまざまな工夫や手間があります。
この記事では、そんな季節を先取りした花を楽しめる仕組みや、寒い冬に春の花を楽しむための工夫についてご紹介していきます。
花がわたしたちの元に届くまで

冬の時期に流通する春の花は、ハウスの中で育てられます。生産者は、気温や日照時間、水分量を調整しながら、春の花を栽培しているのです。チューリップのような球根花の場合は、低温で過ごさせる時期を一定期間設けることによって「冬を越えた」と花に思わせ、その後気温を上げて春が来たと思わせます。その結果、自然な流れで花を咲かせるのです。
品種改良も進み、早咲きや遅咲きの品種も作られたことで、出荷時期の調整がしやすくなっています。ラナンキュラスやスイートピーも温度管理や時期に応じた品種を選ぶことで、寒い時期でも美しく咲くように細やかな工夫がされています。
生産者は、気温や日照時間を調整しながら、市場にとっていまどんな花が必要とされているのかを考えて栽培を行い、冬の花屋の店頭に春の彩りを届けてくれているのです。
海外からの花
近年の花市場で欠かせないのが、海外からの輸入花の存在です。日本で花の少なくなる冬の時期、日本とは季節が逆になる南半球の国々から、品質の安定した花が輸入されるようになりました。オランダやコロンビア、ケニアなど、花の生産が盛んな国々では、品種改良や栽培技術が進み、色や形のバリエーションも豊富です。
こうした輸入花があることで、わたしたちは一年中、幅広い種類から花を選ぶことができるようになりました。季節を越えて花を選ぶ楽しさは、こうした国境を越えた流通によって支えられています。
旅を経てわたしたちの暮らしへ

国内外で育てられた花は、咲ききる前の最適な状態で収穫されます。そして、鮮度を保つために、冷蔵管理で温度変化を最小限にして輸送されるのです。温度管理されたトラックや航空便で運ばれ、市場でのせりを経た後に全国の花屋に振り分けられます。
こうした流通の仕組みが整ったことで、花は特別な日のためだけのものではなく、日常に寄り添ってくれる存在になりました。一年中、鮮度の保たれた美しい花を手に入れることができ、さらには季節を先取りした花までも気軽に選べるようになったのは、この流通の工夫があったからなのです。
冬に春の花を飾る楽しみ
冬の部屋に春の花を飾ること、暮らしの中に明るい彩りを取り入れられますね。寒い日が続く中でも、明るい色彩の花やほのかな香りがあることで、心はふっと明るくなります。
花を飾るというと、身構えてしまう方も少なくないかもしれません。まずは、小さなグラスに一輪挿すだけでも大丈夫です。冬に出回る春の花は、軽やかで扱いやすいものが多いので、花を飾ることに慣れていない方にも気楽に暮らしに取り入れられます。短く切ってもバランスがよく美しく飾れるので、玄関やキッチンなど日常生活で目に入る場所に飾るのがおすすめです。
冬の室内で春の花を楽しむためのコツ

冬の室内は、暖房によって温度も高くなり乾燥しがちです。花を長く楽しむためには、暖房の風が直接当たらない場所に飾るようにしましょう。また、窓辺に置くと外からの冷気の影響も受けやすくなるので、少し室内側に寄せておくと安心です。こまめな水替えや茎の先の戻しをすることで、花の持ちはぐっと長くなります。花に目を向けて気にかける、そんなひと手間が、寒い冬に春の花を長く楽しむためのコツです。
まとめ
寒い時期にも、季節を先取りした春の花が店頭に並ぶようになったのは、生産現場での細やかな工夫や品種改良、国内外をつなぐ流通技術の向上があったからです。一年中さまざまな花が手に入る時代になった今、花はわたしたちにとってより一層身近な存在になっています。
寒さで気持ちが内に向きがちな冬の時期でも、暮らしの中に花があることで、心がほっと明るくなります。また、花を眺めることで、「今日は少し疲れている」「気分を変えたい」など、自分の心の動きに気づくこともあります。花はただそこにあるだけで、わたしたちの気持ちを映す鏡のような存在にもなってくれるのです。
『冬でも春の花を楽しむ』それは寒い冬の時期にも小さな春を迎え入れて、温かな気持ちを味わえる手軽な方法の一つです。今年の冬は、春の花を暮らしに取り入れ、温かな気持ちで過ごしてみませんか。





