秋の色合いを表現する和名
少しずつ空気が澄み、道ばたの葉がふと色づき始めると、「秋がやってきたな」と実感しますよね。眺めるだけでどこか心が落ち着いたり、懐かしい気持ちになったり。日本の秋には、そんな“心にそっと寄り添う”色がたくさんあります。
実は昔から、日本では季節の移ろいを細やかに感じ取り、その美しさを「和名の色」で表してきました。紅葉の鮮やかさだけでなく、枯れ葉や夕暮れの光まで、ひとつひとつの色に名前がついているのです。
今回は、そんな秋の和色について、やわらかくご紹介していきます。色の名前を知ると、いつもの秋の景色が少し違って見えてきますよ。
秋の色が特別に感じられる理由

秋の色には、夏の元気な明るさとも冬の静かな白とも違う“奥ゆかしい魅力”がありますよね。紅葉がいちばん華やぐ季節でもありますが、同時に実りの秋、もの思いの秋でもあり、少し切ない気持ちを呼び起こすこともあります。
日本人は昔から、こうした季節の移り変わりをとても大切にしてきました。平安時代の和歌にも、紅や茜、朽葉など、さまざまな色の名前が登場します。色そのものだけでなく、そこに込められた感情まで表現しようとしていたのですね。
たとえば、夕暮れの空はただの「赤」ではなく“茜”。散ってゆく葉は“朽葉色”。こうして色に名前をつけることで、季節の景色がより生き生きと語りかけてくれるようになります。
和名の秋色を知ることは、昔の人の感性に触れながら、私たち自身の季節の感じ方を深めてくれるきっかけにもなります。
秋の色を彩る代表的な和名の色

ここからは、秋らしさを感じる代表的な6つの和名をご紹介します。それぞれの色の雰囲気や、人に与える印象、そして由来についてお伝えしていきますね。
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紅(べに)
紅葉の赤を思わせるような鮮やかさが魅力の色です。見ているだけで元気が出るような華やかさがありますが、どこか上品で、秋らしい深みが漂います。
紅の由来は「紅花(べにばな)」という植物。古代から染料として使われ、平安貴族も愛した色でした。化粧の“紅”にも使われていたことから、日常の中で人々にとても身近な色だったようです。秋の風景の中に、自然と溶け込む伝統色ですね。
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茜(あかね)
夕焼けのように少しくすんだ赤。温かく、どこか懐かしい雰囲気がありますね。茜は植物の根から作られる染料で、飛鳥時代から大切にされてきました。自然由来の落ち着いた赤は、時間の流れをふわりと感じさせてくれます。
夕暮れの空を眺めながら「今日もお疲れさま」と言われているような、優しい気配をまとった色です。
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朱(しゅ)
明るい橙寄りの赤で、力強さと神聖さを感じる色です。神社の鳥居を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。朱には“邪気を払う”力があると信じられ、古来より建物や祭礼の道具に使われてきました。
秋の果実や紅葉のアクセントとしても美しく、エネルギーを少しだけプラスしてくれる色でもあります。
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朽葉色(くちばいろ)
秋の落ち葉をそのまま写しとったような黄褐色。目立つ色ではありませんが、秋の静けさや深みを語るには欠かせない存在です。
どこか侘び寂びの雰囲気があり、見ていると心がふっと落ち着きますね。自然素材や木の色とも馴染みやすく、インテリアにも人気のある色です。
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栗色・栗皮茶(くりかわちゃ)
栗の実や殻のような、温かい茶色。秋の実りを思わせる優しさがあります。深みのある茶色は、安心感や穏やかさを感じさせ、季節問わず好まれる色でもありますが、秋には特にしっくりきますね。自然からもらった温度のような、やわらかい暖かさを含んだ色です。
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黄櫨染(こうろぜん)
黄土色に近い、落ち着いた黄金色。少しくすんだ色調が上品さを引き立てます。古くは平安貴族の衣装にも使われた格式ある色で、秋の光にとてもよく似合います。
明るすぎず暗すぎず、深い秋の静けさと成熟を感じさせる色ですね。紅葉の黄色とはまた違う、柔らかくて重厚な雰囲気があります。
どの色も、自然の風景と深くつながっていますね。
色の名前を知ると、秋の景色が“ことばの色”として目の前にふわっと広がっていきます。
秋色の和名がもたらす心理的な心地よさ

秋色には、ただ美しいだけでなく、気持ちをやさしく整えてくれる力があります。
紅や朱のような赤系は、体温や気持ちを少しだけ上げてくれるような暖かさがありますね。「元気がほしいな」と感じる日に、服や小物に取り入れてみても良さそうです。
一方で、朽葉色や栗皮茶といった茶色系は、安心感や穏やかさを与えてくれます。ゆっくり落ち着きたい日や、ほっとしたいシーンで、こうした色を味方にするのはとてもおすすめです。
黄櫨染のような深い黄色は、落ち着きと品の良さを感じさせますので、特別な日の装いにもぴったりです。心理的に“整う色”でもあるので、空間に1つあるだけで雰囲気が変わりますよ。
秋色の和名を知ると、日々の選び方にも変化が出てきます。「今日はどんな気分かな?」と考えながら色を選んでみるのも楽しいですね。
まとめ:和名の秋色で、季節をもっと豊かに味わってみませんか

秋色の和名を知ると、日々の選び方にも変化が出てきます。「今日はどんな気分かな?」と考えながら色を選んでみるのも楽しいですね。




