量子力学的にみた光とは

朝のやわらかな光、夕暮れのオレンジ色の空、ふと手に取った本の装丁の色。私たちは毎日、たくさんの「色」に囲まれて暮らしていますね。でも、少しだけ立ち止まって考えてみませんか。その色を生み出している「光」とは、いったい何者なのでしょうか。色彩を学ぶ人にとって、光は単なる明るさではなく「色そのものの材料」です。

今回は、量子力学という最先端の学術的視点から、光の正体をやわらかくのぞいてみたいと思います。難しい数式は出てきませんので、どうぞ安心してくださいね。

光は「波」でもあり「粒」でもある

昔、光は水面のさざ波のように広がる「波」だと考えられていました。確かに、光は回り込んだり重なったりする性質があり、波のように振る舞います。ところが20世紀のはじめ、光は「粒」としても振る舞うことが分かりました。その考えを広めたのが、物理学者のアルベルト・アインシュタインです。彼は、光がエネルギーの最小単位「光子(フォトン)」として物質とやり取りすると説明しました。

波のように広がりながら、やり取りするときには粒になる。これを「波動粒子二重性」といいます。なんだか不思議ですね。でも、この性質こそが色を生み出す土台になっています。

色の違いは「エネルギーの違い」

量子力学では、光子はそれぞれ決まったエネルギーを持っています。そして、そのエネルギーの違いが、私たちが感じる「色の違い」になります。

エネルギーが高い光は、紫や青に近づきます。

エネルギーが低い光は、赤に近づきます。

虹のグラデーションは、光のエネルギーがなめらかに変化している様子なのですね。

「赤は強い印象」「青は落ち着く印象」といった色のイメージがありますが、物理的に見ると、それぞれ届いている光のエネルギーが本当に違っているのです。色彩設計とは、ある意味で“エネルギーのバランスを整えること”とも言えるかもしれませんね。

物が色をもつ理由――電子との静かなやり取り

では、なぜリンゴは赤く見えるのでしょうか。物質の中にある電子は、連続ではなく「とびとびのエネルギー段階」に存在しています。階段のようなイメージです。そこに光子が届くと、次のようなことが起こります。

・エネルギーがぴったり合う光 → 吸収される

・合わない光 → 吸収されず、反射される

私たちが見ている色は「吸収されずに残った光」です。赤いリンゴは、赤以外の多くの光を吸収し、赤い光だけを跳ね返すため私たちの目に届くのですね。つまり色とは、光と物質の“相性の結果”なのです。この視点で見ると「色がそこにある」というよりも「光との関係の中で色が生まれている」と考えられます。少しロマンを感じませんか。

光は「確率」で存在している

量子力学のもうひとつの特徴は、光が“確率的に存在する”という考え方です。光子は「ここに確実にある」と決まっているというよりも「このあたりに現れる可能性が高い」という確率の広がりとして存在しています。そして観測された瞬間に、状態がはっきりと定まります。

色を見るという行為も、実はとても繊細なプロセスです。

1.光が放たれ

2.物質と相互作用し

3.目に入り

4.脳が色として解釈する

そのスタート地点である光さえも、確率的な存在なのです。そう思うと、目の前の一色が、ぐっと奥行きを持って感じられませんか。

色は「宇宙レベルの対話」の結果

量子力学的に見ると、色とは単なる見た目ではありません。光子という小さなエネルギーの粒が、電子と静かにやり取りし、その結果として残った光が私たちの目に届く。そして脳が意味を与え「きれい」「あたたかい」と感じる。色は、光と物質、そして私たち自身が関わる中で生まれる現象です。

普段は感覚で扱っている色の背景には、ミクロな世界のダイナミックなドラマがあります。でもそれは、難しい数式の世界というより、目に見えない小さな対話の積み重ねなのですね。

今日はひとつの色を、少しだけ違う目で

今日、どこかで一色をじっと見つめてみてください。その色の奥で、光子と電子が静かにエネルギーをやり取りしている様子を想像してみてください。「色って、こんなにも深いのか」そんな気づきが、きっと生まれるはずです。

量子力学は難しそうに見えますが、色を愛する人にとっては、光の物語をより豊かにしてくれる視点のひとつです。少しずつ、楽しみながら触れてみませんか。