中秋の名月を愛でるための花飾り

夏の暑さがひと段落して涼しさを感じ始める秋の夜に、お月見を楽しまれる方は多いですよね。「中秋の名月」とは、旧暦の8月15日の月のこと。一年の中でも特に月が明るく美しいとされ、古くからその月を眺めて愛でる文化が広まっていました。

お月見にはススキを飾るイメージをお持ちの方が多いと思いますが、せっかくならば季節の花を使った「花飾り」を沿えて、より風情や季節を感じてみませんか。

 

今回は、中秋の名月をより一層楽しむための「花飾り」の選び方やアレンジ方法についてご紹介します。

中秋の名月には秋の七草を用いた花飾りを

中秋の名月を彩る花飾りは、秋の七草を使ったものがおすすめです。七草粥でよく知られている春の七草とは異なり、秋の七草は主に観賞用として用いられ、萩(ハギ)・尾花(オバナ・ススキ)・桔梗(キキョウ)・撫子(ナデシコ)・藤袴(フジバカマ)・葛(クズ)・女郎花(オミナエシ)の7種類のことを言います。

これらの花を組み合わせた花飾りは、中秋の名月の美しさをより一層際立たせてくれますよ。特に尾花とも呼ばれるススキは、中秋の名月には欠かせない飾りです。本来は稲穂を飾っていたものが、手に入れやすいススキに変わっていきました。魔除けの効果もあり、災いや邪気を遠ざけて豊作を願うために使われたのが始まりです。

秋の七草はどれも落ち着いた色合いで秋の風情が強く感じられるものなので、美しい月とともに楽しむのに向いています。

小さな赤紫色の花を咲かせる萩は、古くから詩歌にも多く詠まれてきた秋の風情が感じられる花です。秋のお彼岸の時期に咲くことから、おはぎの名前の由来ともなっています。

尾花

中秋の名月には欠かせない花で、七草の中でも一番身近なものでしょう。稲穂の代わりに飾られ、豊作を祈願する意味合いもありますが、何よりもその風に揺れる姿が美しい月によく似合います。

桔梗

星形の花びらが端正で愛らしく、紫色の花が夜空に映えます。薄い花びらは月の光を受ければ透き通るように美しく、お月見にぴったりです。

撫子

撫子には多くの種類がありますが、秋の七草で「撫子」と呼ばれているのは、日本固有種の「かわらなでしこ」です。現在は手に入りにくいため、園芸種のものなどを取り入れながら花飾りに自由に使ってみましょう。

藤袴

優しい薄紫色をして、奥ゆかしさも感じさせる小さな花の藤袴は、乾燥させると桜餅のような香りがするため、古くから香料としても用いられてきました。花飾りに加えると香りも楽しめます。

蔓性の植物で、紫色の花を咲かせます。漢方薬やお菓子・料理などにも用いられ、日本人の生活に密接に関わってきた植物です。蔓を絡めて花を咲かせる姿が野趣にあふれているため、他の七草にはない雰囲気を演出できます。

女郎花

鮮やかで小さな黄色の花が多数咲き、薬草としても古くから用いられてきた花です。優雅な姿は花飾りに用いると、華やかな雰囲気を加えられます。

季節感を活かしたアレンジ方法

中秋の名月に合わせて作る花飾りは、秋ならではの風情を感じられるような花を選び、自然な色や形を活かして仕上げるのがおすすめ。

秋の七草は、かつては野山に咲いている身近な草花でしたが、最近では自生しているものも少なくなり、手に入れにくくなっています。ススキやナデシコ、キキョウなど、お花屋さんでも手に入れやすいもので七草以外の秋の花と組み合わせれば、アレンジのバリエーションも増えて気軽に秋を感じられます。

たとえば、菊の仲間のピンポンマムはまんまるな形が印象的ですが、黄色を選ぶと満月も連想され、中秋の名月にぴったりなアレンジになりおすすめですよ。

中秋の名月をより楽しむための花飾りの工夫

花飾りに工夫をすると、より中秋の名月を楽しめます。たとえば、ススキと他の花を組み合わせて飾る時には、バランスをとってまとめることもできますが、あえてススキだけを長めに残して花器から大きく外に広がるようにして飾ると、実り豊かな稲穂が枝垂れている姿に見え、この時期ならではの風情が一層感じられます。

また、古くから香りを楽しむために使われた藤袴を取り入れた花飾りは、名月とともに涼しげな香りも感じられ、視覚だけでなく嗅覚でも名月を楽しめる花飾りが出来上がります。

好みに合わせて色や形の組み合わせ、香りなど、五感全てで秋を感じられるよう、花飾り作りを楽しんでみましょう。

花飾りと共に楽しむ中秋の名月の過ごし方

月を眺めながらゆったりと過ごす時間は、秋の夜長の特別な時間になりますね。花飾りに趣向をこらしてみると、いつもと違った雰囲気が演出され、中秋の名月の美しさがより一層、心に沁み入ってくるはずです。お月見団子や花飾りを家族や友人と手作りしてみるのも、非日常のお月見がより印象深い思い出になりますよ。

テレビやスマホから目を離して月の光を浴びながら語り合うと、普段よりも会話も弾むかもしれませんね。

まとめ

中秋の名月は、秋の風物詩として日本では多くの人に愛され続けてきた特別な行事です。お月見に合った花飾りは月の美しさをより一層引き立て、特別な夜を演出してくれます。

今年の中秋の名月は9月17日です。秋の七草や、季節を感じられる花々を取り入れた花飾りとともに、お月見を楽しんでみませんか。